え?!八王子にも芸者文化があった!! 地域を愛し、地域に愛される芸者【ゆき乃恵】さん
- 2020.03.31
- ディープ多摩
芸者さんと言えば京都。そして『一見さんお断り』。2年前に高校を卒業した若僧のボクには全くご縁のなかった世界でしたが、なんと!!今回、そんな雲の上の世界にお住いの芸者さんに取材する機会をいただくことができました!
もはや言葉では表現することのできないほどの感動。この抑えきれない胸の高鳴りは…背中に羽が生えて今にも宇宙の果てまで飛んでいってしまいそうな気分です!!
冷静になれ、特派員ユウト。これは仕事だぞ。よし。心を落ち着けて、いざ!八王子へ!・・・え?八王子!?
【芸者さんが八王子に…いるの?!】
というわけで、やってきました八王子駅。聞くところによれば、駅から徒歩10分ほどのところにいらっしゃるとのことですが…果たして芸者さんはいるのでしょうか?八王子に芸者って聞いたことなーい!! というのが本音。
少々、不安です。
とりあえず行ってみるしかない!ということでスマホのナビを頼って歩を進めます。何度か路地のような場所を入っていくと… 景色が一変!
なんとも歴史を感じさせるような隠れ家的な場所です。だんだんそれっぽくなって来ました。
おぉ…風情のある佇まい。確かに、雲の上の住人である芸者さんがいらっしゃってもおかしくない。
和の感じがとても落ち着きます。素敵だ…。
ゴクリ…。ふぅ…。深呼吸。心を整えてから中に入らせていただきました。
出迎えてくれたのは、若い芸者さんから「お母さん」と呼ばれるこの道37年の大ベテラン『めぐみさん』。なんでしょう。この包み込まれるような安心感は。
早速、奥の部屋に通していただきました。すると…
うわ!ほんとにいた!八王子にいた!!
写真左が「てる葉さん」。右が「小菊さん」。…お美しい。これこそジャパニーズビューティフォー!!
ボクは修学旅行で京都に行ったのですが、その時は芸者さんを見れなかったのでこうして初めて目の前で見ることができて、とても感激しました。
取材のためにわざわざ支度をしてくれたとのこと!なんともありがたい!
【そもそもなんで八王子に?!】
話をお聞きすると、実は八王子の芸者の歴史はとても長いのです!八王子で芸者さんが活躍したのは明治40年頃から。なんとあの最後の将軍、徳川慶喜が生きていた時代からなんです!将軍が生きていた時代が昔過ぎてピンときませんが、これだけはわかります。ものすごい歴史があるじゃないですか!
その昔、八王子は織物業が盛んで全国から来る商人の宿場町として栄えていたそう。
そこで芸者さんが集まり、八王子に花柳界(かりゅうかい)ができたとのこと。
「花柳界」というのは芸者さんの世界のことで、東京では八王子のほか、赤坂、新橋、浅草、向島、神楽坂、芳町にあり、これらをまとめて「東京六花街」と呼ぶそうです。なんかかっこいい響き。
現在、八王子には置屋(おきや。芸者さんを抱えている家のこと。)が7件あり、その中でも中心的な存在が今回取材させていただいた『ゆき乃恵』さん。今、八王子に芸者さんは18人いて、その中の7人がゆき乃恵さんにいます。ちなみに、バブルがはじける前ですが、八王子にはなんと215人の芸者さんがいたらしいのです。時代の移り変わりを感じます。
【八王子の芸者さん。ほかの地域となにが違うの?】
芸者の世界には様々な違いがあるようです。
まず、芸者さんの呼び方が京都と関東で全く違います。
京都でいう舞妓さんを関東では半玉(はんぎょく)さんと呼びます。この言葉、初耳でした…。呼び方だけではなく意味も少々違うそうで、舞妓さんは15歳からお座敷に立てるのに対して半玉さんは18歳からでないとお座敷に立てません。ちょっとボクのなかでもこんがらがってますが、さらに続きが。
その舞妓さんと半玉さんも修行を重ね呼び名が変わります。舞妓さんは「芸妓(げいこ)」、半玉さんは「芸妓(げいぎ)」と呼びます。…ん?漢字は一緒だけど呼び名が違う?実は元舞妓さんは「げいこ」で元半玉さんは「げいぎ」と呼ぶのだそうです。一緒のようで一緒じゃない…混乱しまくりです。もし学生時代のテストにこんな問題が出てたらギブアップしてたかも。
そして、半玉さん、舞妓さん、芸妓さん(漢字は一緒だから省略できて便利ではある)にも違いがあります。半玉さん、舞妓さんは髪型を地毛でセットするのに対し、芸妓さんはカツラです。
料金面でも京都や他の東京六花街と違いがあります。八王子の場合は芸者さん1人1時間8,000円で2時間制が基本。一方、京都などでは同じ条件で10万円を超えることもあるのだとか…。10万円って…ボクのお給料1か月分がたったの2時間でほとんど消えてしまう計算ですね!京都までの交通費含めたら完全に無くなりますね…オーマイガッ!!ですので、八王子のこのお値段は破格。こんなボクでもがんばって色々なものを我慢すれば行けてしまうのです!
さらにさらに。一番驚いたのがコレ。『地域のみなさまとの距離』。東京の中でも違いがあるらしく、八王子花柳界はとにかく距離が近い!非常にアットホームで、地元のお客さんが来てくれるのはもちろんのこと、市議会の議場や小学校、法事にまで呼ばれたりするそうです(その時は着物も喪の仕様になる)。また、八王子祭りという大きなお祭りを始め、数々の地元のイベントにも積極的に参加。なかでも「八王子をどり」という八王子花柳界の組合(三業組合)が主催する公演は見もの。3年に1回しか行われないのですが、なんと今年2020年は開催年!!見に行かない理由はありませんね!!
今年3年ぶりに開催!「八王子をどり」のポスター^^
こういったイベントに参加しているのは、若い人をはじめ、もっとたくさんの人に芸者の良さを知ってもらいたい思いがあるから。
地域を愛し、地域に愛され、誰でも訪れやすいのが八王子花柳界の特徴。
このようなことは他の東京六花街ではまずあり得ないことだそうです。八王子ならではの温かさなのかもしれませんね。
【芸者さんのお仕事】
芸者さんはとっても忙しい。朝9時からお稽古がスタート。踊りや鼓(つづみ)、笛、茶道、三味線などなど。最近では海外の方に披露することもあるので英会話の勉強もするそう。夕方からお客さんの前で披露し、終わるまでが芸者さんの一日。家族レベルのご依頼もあれば、何百人ものお客様の前で披露することもあるそう。年末年始は特に忙しく、お客様からの依頼が何件もあるため、終わるのが夜中の1時〜2時になることが毎日続くことも。なんともハードなお仕事…。体調、くずされませんように。
【お座敷遊びを体験!】
取材の写真を撮らせていただいたのですが、その際、実際のお座敷のようにしていただきました!鼻息、荒くなっちゃってたかも…
写真からも、しなやかで雅な動きが伝わってくるかと思います。
めぐみさんは「撮った写真からは音が出ませんが、三味線を持ったら弾かないと落ち着かないもので…」とにこやかに言い、軽く弾いてくれて。
「べんべんっ」
三味線の心地よい音が部屋に響き渡りました。思い出すだけで、別世界に飛んでいっちゃいそうです^^
【芸者さんに根掘り葉掘り聞いてみました!】
やっぱりこういう所では正座で聞かねばと正座でお話を聞いていると、
「どうぞ、足を崩してください。よかったらイスもありますので」と優しさ200%のめぐみさん。しかし!ここはディープ多摩調査団のプライドをかけて甘えるわけにはいきません!
…が耐え忍ぶことわずか5分。足に異変が…。
限界に近づいてるのがわかりました。帰りの駅までの距離も考慮すると…
「家に帰れない」
そう悟った瞬間ギブアップ…。お話しの途中にも関わらず、
「すみません、足崩します」
自分で発した言葉ながらしばらく耳に残るほど情けなかった。それに対し芸者さんは最後まで姿勢一つ崩すことはありませんでした。さすがです!
てる葉さんと小菊さんに芸者になった理由を聞いて見たところ、以下の回答が。
・人前で踊ることが好き
・着物が好きで着物に関わる仕事がしたかった
このように、「着物が好きで着物を着てお仕事をしたい!」という人が芸者さんになることが多いそうです。
以前、芸者さんは女性の敵というイメージがあったそうなのですが、今は時代も変わり、そんなことは全くなく。芸者さんになりたいという若い人も多いそう。昔は人からの紹介で始めるケースがほとんどだったらしいのですが、今はネットで知ったことがきっかけで始めた芸者さんがいるとのこと。ネットで?!芸者さんがネットかぁ。「昔」と「今」がかけ合わさったような、ちょっと考えられない組み合わせです。ってこれは偏見か…
どんどん話を聞いていきます。気になっていたのが、「芸者さんは衣装のセッティングにどれくらい時間をかけているのか」ということ。明らかに大変そうじゃないですか。これだけで心折れそう…。この疑問には、てる葉さんが答えてくれました。
「この着物を着るのに最初は1時間半ほどかかりましたが、今は10分、浴衣なら5分で着れますよ」
そんな早いんすか!ボクの姉が浴衣を着るのにとても苦戦していたので、その大変さが少しだけわかるのですが、5分は早すぎる!
てる葉さんは地毛で髪型をセットするため化粧なども含めると1時間かかるそう。そりゃそうですよね…。これをほぼ毎日やるって…ボクから言わせてもらうと修行ですね。修行。
根掘り葉掘りいきます。てる葉さんと小菊さんに趣味を聞いてみました。するとボクの想像してたのとは違うものでした。
てる葉さんは漫画を読むことが好きで、今は「鬼滅の刃」にドハマり中。他の芸者さんにもおすすめしているそうで、反応は悪くないとのこと。
一方の小菊さん。ディズニーが大好きで年間パスポートを持ってたくらい。だけど、ミッキーの顔が微妙に変わったことで熱が冷めてしまったそうです。ディズニーファンならわかるんでしょうか。マニアックさにびっくり仰天。おもしろすぎッス!
今はLDH にドハマり中で、なかでも三代目の大ファンだといいます。(推しはNAOTOさん) ボクもEXILEの大ファンでとくに10年前くらいの7人時代が好きで。今は少しトーンダウンしてるので小菊さんの熱には負けますね〜。てな感じで気づいたら、しゃべり下手なボクがペラペラしゃべっていて。ん〜さすがだなと思いました。
もう一つ質問。
「芸者さんをやっていて嬉しかったこと、楽しかったことはなんですか?」
『昔からの常連さんに芸者さんらしくなったねとか踊りが上手になったねとか、褒められた時がやっぱり嬉しいですね。あと、楽しいことは、ゆき乃恵のみんなでお花見をしたり、「おついたち会」といって月の初めにみんなで集まってお昼ご飯をいただいたりですかね。』
取材中、ずっと感じていたのですが、芸者さん同士とても仲が良い。後輩のてる葉さんが先輩の小菊さんに冗談をいうシーンもあったくらい仲良しなのです。大切な仲間との時間、楽しいはずです。
【芸者の魅力。そして芸者とは?】
最後に。このテーマでお話をお聞きしました。
「このような伝統的な格好を普段からできることだったり、普通の人じゃお目にかかれない方にお会いできてお話しを聞けることだったり。芸者の世界にはマニュアルがなく、ゴールもないため日々学ぶことがたくさんあるんですよ。」
「芸者とは毎日学び、発見があり色々なことを吸収できる。大変というより楽しさが勝ってしまうもの。」
大変さよりも楽しさが勝る。自分が楽しめるからこそ、お客様を楽しませることができるのかもしれない。まだまだ新米の自分だけど、素直に見習いたいと思った。なんかうまく言えないけど深い世界だ。毎日が学び。日本の深さを垣間見た気がするなぁ。
【特派員からの一言】
昔から続く地域の伝統を守るべく、地域と共に生き、地域に愛されているゆき乃恵さん。その姿を見た人たちが、次の世代、そしてまた次の世代へと受け継いでいってほしい。心からそう思いました。
今回の取材では、日本のお家芸である「おもてなし」をたくさんいただいた気がしています。改めて日本の文化に触れることができた感覚。すごく貴重でした。海外の方にもぜひオススメしたいなぁ。最近、うちの会社にベトナムからのメンバーが加わったし、一生懸命働いて、次はお客さんとしてゆき乃恵さんに行くぞ!と誓ったボクでした。
【店舗情報】
店名 置屋ゆき乃恵
住所 〒192-0085 東京都八王子市中町9−9
TEL 042-623-1888
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